特別区志望の受験生の中には特別区出身ではない人も多く、「地元であれば志望動機も書きやすいのにな…」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
しかし、出身でなくても特別区に合格している人は多数おり、地元じゃないからダメだということは全くありません。
大切なのは「あなたならではのオリジナリティ」です。
そこでこの記事では、志望動機の作り方について詳しく解説していきます。
何を書けばいいのか?オリジナリティを出すにはどうすればよいのか?…など、しっかりお伝えしますので、あなたの志望動機づくりにぜひお役立てください。
ちなみに、下記の記事では「特別区の面接対策」について解説していますので、よくある質問パターンなどを知りたい方はご覧ください。
「志望動機」で何を見られているのか?
進学試験や就職試験では、必ずと言ってよいほど「志望動機」を尋ねられます。
このことに疑問を感じたことのある人はいないだろうと思いますが、志望動機を通して試験官が何を見ているのか、考えたことはあるでしょうか。
このことをしっかり把握することで、試験官が求める志望動機を書くことができますので、ここで一緒に考えてみましょう。
志望度の強さ
志望動機でまず見られるのは、あなたの志望度の強さです。
他の自治体や一般企業ではなく、なぜ特別区なのか?あなたの問題意識や熱意が問われています。
こうした意識が中途半端のまま志望動機を作成すると、ベテランの試験官には見抜かれてしまうため、まずは自分の中に「本気で特別区のために仕事をしたい!」という明確な志望動機の「核」をつくりましょう。
もしかしたら、あなたの最初の志望動機は「公務員として安定した生活がしたい」「〇〇区はスタイリッシュでイメージがいい」というような“自己都合”的なものかもしれません。
それはそれで、多くの人にとって本当のところでしょう。
しかし、そのままで受験したのでは、本気の人にはかないません。
特別区の現状をよく調べ、その解決のために貢献することを「やりがいのある仕事だ」「自分も挑戦してみたい」と、心から思えるようになって初めて、付け焼刃ではない志望動機が書けるのだということを覚えておいてください。
特別区の課題についての理解度
志望度が強くても、特別区の仕事を理解できていなければ志望動機も的外れなものになってしまいます。
特別区の職員になりたいのであれば、特別区の現状を把握し、どんな課題を抱えているのか、その解決に向けて現在どのような施策が取られているのか、今後のビジョンはどのように描かれているのかなどを十分に把握しておく必要があります。
さらに、現状把握にとどまらず、当事者意識をもって、「自分だったらどのように解決を図るか」というところまで考えることを習慣にしておきたいものです。
志望動機作成の手順
では、ここからは、志望動機作成の手順を一緒に見ていきましょう。
ぜひ紙とペンを用意して、必要事項を書き出しながら読み進めてください。
「なぜ特別区を希望するのか」を明確にする
あなたがなぜ他の自治体でなく特別区を希望するのか、あなたと特別区との“つながり”を示すエピソードを書き出してみましょう。
その区の素晴らしさや課題を挙げて動機を述べても、あなた自身との関わりが見えなければ、誰にでも書ける表面的な志望動機になってしまいます。
もしあなたが特別区出身者であれば、子どもの頃の地域での思い出や、住民として抱く印象・問題点などを志望動機として盛り込むことができるでしょう。
このように“自分の実感”として課題を取り上げることで、リアリティやオリジナリティを出すことができますね。
限られた文字数ですが、これをもとに面接でも質問を引き出すことができるでしょう。
では、特別区出身ではない場合、どうしたらよいでしょうか。
特別区出身者でない人が特別区を志望するに至るには、やはり何らかの接点があったはずです。
まずはそれを深掘りして書き出し、志望動機に盛り込むことを考えましょう。
出身校やアルバイト先が区内にある、区内でボランティアをしたことがあるなど、その区に興味をもったきっかけがあれば、それが使えます。
まったくないなら、早いうちに実際にアルバイトやボランティアをその区内でやってしまうのも一手です。
(例2)学生時代、○○区の学童ボランティアをした際、ひとり親家庭の貧困が子どもたちの生活に様々な影響を及ぼしていることを痛感しました。○○区ではひとり親家庭への相談窓口を設けるなど施策が進められていますが、私はそうした施策を必要な方々にしっかりと届ける役割を担いたいと考え、○○区を志望しました。
また、自分が興味をもっている分野(福祉・教育・環境・災害対策・財政など)についての取り組みが進んでいる区や、これから推進しようとしている区で貢献したいという志望動機も考えられます。
(例3)私は大学で危機管理学を専攻し、防災分野に強い関心を抱いています。○○区では防災10年構想が策定され、「災害に強いまちづくり」が強力に推進されていると知りました。家屋の建替や道路整備、情報提供システムの充実など防災対策には時間がかかりますが、○○区の10年ビジョンを実現する一翼を担いたいと希望しています。
特別区の仕事内容を理解する
上の項目でお伝えしたことと重なりますが、志望動機には仕事内容の理解が必要不可欠です。
ホームページや説明会はもちろん、あらゆる方法を駆使して仕事内容への理解を深めておく必要があります。
そうすることで、自分が特別区職員として何に取り組みたいのかが見えてくるはずです。
子育て・介護・防災など興味ある分野が見つかったら、その分野についてその区にはどんな課題があるのか、それに対してどのような施策が行われているのか、今後の計画はどうなっているのかなど、さらに詳しく調べていきます。
特別区各区のホームページでは、「組織案内」などとして様々な部や課ごとの仕事内容が掲載されていますので、まずは気になる区のホームページを細かくチェックし、それぞれの部や課の仕事内容を見てみるのがおすすめです。
また、どの区でも、それぞれの重点課題に対する「基本構想」や「〇年計画」といったものが示されているので、それらも参考にしてみてください。
仕事内容については、区のホームページのほかにも次のようなものがあります。
各区の職員採用案内 | ・新規採用職員のメッセージなどを読むと、志望動機作成の参考になります。 ・その区がどのような事業に力点を置いているかも読み取ることができます。 |
特別区職員ハンドブック | 採用後5年未満の職員を読者として想定し、特別区職員としての基礎的な知識が網羅された本です。特別区各区の現況や組織と仕事について知ることができます。 |
特別区長会調査研究機構ホームページ | 特別区の諸課題についての調査研究テーマがまとめられています。どのような問題が注目されているのかを知る参考になります。 |
志望動機として書く際にも、「防災対策に力を入れたい」と書くより、「○○区で進められている防災△△プロジェクトに…」と具体的に述べたほうが、「よく調べているな」「関心をもっているな」という印象になり、理解度の高さや意欲・熱意をアピールできます。
またその際、国や都庁、民間企業との違いを意識して考えると、ほかでもない「特別区」を志望する理由を明確にすることにつながります。
国や都庁にはない「地域密着性」や、民間企業にはない「公益性」がキーワードとなるでしょう。
区の課題に対する自分の意見を明確にする
特別区の課題を把握したら、それに対する自分の意見を考えましょう。
単に課題を把握しているというだけでなく、自分なりの解決策を示すことで、熱意や主体的な姿勢を示すことができます。
とはいえ、「区の課題についての解決策なんて、そんな難しいことよく分からない…」というのが多くの人の本音ではないでしょうか。
たしかに、学生一人が示せるような解決策で区の課題がすぐに解決できるはずはありません。
そんなに簡単なことなら、そんな課題はとっくに解決しているでしょう。
志望動機で見られているのは、あなたが区の現状を把握して自分事として捉えているか、そして、区として行おうとしている施策に関心をもっているかということだと考えてください。
それに応える志望動機とするために、まずは区が公表している基本構想などを参考にし、それに沿った意見を簡潔にまとめてみましょう。
ただし、区が示しているものとまったく同じではオリジナリティに欠けるため、ほかの受験生と差をつけることができません。
特別区以外の自治体で行われている類似の課題に対する施策を参考にして、新たな視点を加えるとベターです。
自分で考えたまったくオリジナルな解決策を示すのももちろん素晴らしいことですが、区の実態に沿っていない案や予算が膨大にかかるなど実現不可能な案にならないよう気をつけましょう。
また、記述する際に「〇〇の課題を解決するためには、●●すればいい。」という表現は避けたほうが好ましいです。
「●●すればいい」という表現では、「●●さえすれば、〇〇の課題はすぐ解決する」という安直なニュアンスとなってしまい、読み手からすると「そんなに簡単なものではない。考えが甘いのではないか」という印象となりかねないため注意しましょう。
課題の解決に活かせる自分の長所を示す
課題の解決策を述べるだけでは、まだオリジナリティは出せません。
そこで活かせる「自分の長所」も合わせて示しましょう。
そこまで書いてこそ、あなたならではの志望動機となります。
取り上げた課題に対し、福祉・教育・防災など大学での自分の専門分野が直接活かせそうであれば、それをアピールしましょう。
学んだ専門分野が直接マッチしない場合には、サークル活動やボランティア、アルバイトなどで培った自分の長所が活かせることを示します。
どう書けばよいか難しい場合は、「コミュニケーション力」や「傾聴力」を活かして住民の声を聞き実態を把握するといった方向性にすれば、地域密着型である区の仕事とマッチしやすく、書きやすいかもしれません。
志望動機作成上のNGポイント
ここまで志望動機作成の手順やポイントをお伝えしてきましたが、ここからは逆に、やってはいけないNGポイントをお伝えします。
作成前にチェックしておくのはもちろん、作成後にもこれらのポイントが含まれていないか、再確認してください。
自己利益優先的な内容が含まれている
「福利厚生が充実していて収入面も安定している」「〇〇区のスタイリッシュなイメージに憧れる」「〇〇と比較して残業が少ないと聞いた」…などの理由は、おそらく多くの受験生の本音であると思われます。
職場環境の充実は、確かに強い志望動機となるでしょう。
長く働き続けるためには仕事と家庭の両立も必要であり、福利厚生や収入の安定は非常に大切なことです。
しかし、文字数の限られる志望動機の中で、そうした「自己利益」面に触れるのはお勧めできません。
区の仕事に対する熱意のアピールにならないからです。
特別区に限らず、志望動機で見られるのは、「社会貢献への意欲」です。
よりよい特別区、よりよい社会のために働く人を求める試験であることを忘れないようにしましょう。
一般論のみで具体性・個別性がない
区の現状や課題について述べる際に、ホームページなどに掲載されている内容はもちろん参考にしますが、そのまま引用するのは避けましょう。
大切なのは、あなた自身が特別区と触れ合ったことで得られた「実感」です。
例えば環境問題に触れる場合、「〇〇区は緑豊かで公園も多く…」と抽象的に書くよりも、「私は〇〇公園をよく利用しますが…」と具体的な体験として書いたほうがよいということです。
ホームページなどで拾ったような区の魅力や施策を列挙して「私もそれに取り組みたい」としている志望動機をよく見かけますが、それでは具体性・個別性がまったくなく、机上の空論のような印象となって大きなマイナスとなりますので、十分注意しましょう。
話を盛ろうとして事実でないことを書く
自己利益を求める本音を書いてはいけない、一般論ではいけないと言われて、「じゃあ話を作れということか?」と思った方もいるのではないでしょうか。
たしかに、自己アピールするために実際の経験を膨らませて書くようなことは時には必要かもしれません。
しかし、思ってもいないこと、やってもいないことを書くのはNGです。
面接で突っ込まれたときにほころびが出てしまい、マイナスの印象になるおそれが大きいからです。
試験官の眼は鋭いもので、受験生の言葉が表面的な薄っぺらいものか、本心から出ているものかはすぐ見抜かれてしまいます。
はじめは自己都合的な動機しかもっていなかったとしても、志望動機を練り上げる過程で本物の熱意をもてるまでにしておくことが必要です。
志望動機を他の人に作ってもらう
志望動機を練り上げるのは、人によっては大変なことかもしれません。
うまく書き進められず、どうしてよいかわからなくなることもあるかもしれません。
そんな時に、信頼できる人の指導を受けたり、添削をしてもらったりするのはよいことですが、書けないからといって他の人に丸投げするようなことはやめましょう。
自分のものになっていない志望動機では、面接のときに見抜かれてしまう危険性大です。
志望動機の作成は、あなたが区の職員としてどう働いていくのか、その意義をあなた自身が見出すための貴重な第一歩です。
志望動機の作成に真剣に向き合い、区の現状や課題を調べ、自分の足で区を歩いてみる中で、真の問題意識が芽生えるはずです。
その問題解決のために自分に何ができるかを考えて、そこにやりがいを見出すことが大切です。
この過程を経ることでこそ、特別区に求められる人材になれるのだと考え、ぜひしっかり取り組みましょう。
まとめ
今回は、志望動機の作り方の手順やオリジナリティの出し方についてお伝えしました。
これからやるべきことが見えてきたのではないでしょうか。
志望動機の作成は、事務的に片づければよいものではなく、特別区の職員としてのあなたの気持ちを揺るぎないものにする大切な過程です。
大変さもありますが、進めていくうちに「おもしろい!」「ますます特別区で働きたくなった!」と思えるようであれば、合格は近いでしょう。
そう感じられるようになるまで、ぜひとことん取り組んでみてください。
この記事を読んだみなさんの特別区合格を、心からお祈りしています。
ちなみに、下記の記事では「特別区の面接対策」について解説していますので、よくある質問パターンなどを知りたい方はご覧ください。